■J_Coffeeのテクニカル教室■
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指数平滑移動平均線(EMA) は優れもの |
単純移動平均には、欠点があります。例えば、10日移動平均において、最新の株価と10日前の古い株価を同じように扱います。また、11日以前の株価は、まったく計算に入っていない。これは、明らかに不合理です。
この点を、改善したのが、指数平滑移動平均線(EMA)です。
すなわち、データが一日古くなるたびに、1より小さい数α(平滑化定数)を掛け算するのです。新しいデータほど重要視されますし、いくら古くても影響はわずかに残るのです。
計算式で書くと次のとおりです。
EMA=A{(今日の終値)+(1日前の株価)×α+(2日前の株価)×α^2+ (3日前の株価)×α^3+・・・・・・・・} |
数学が好きな方は、「もし、株価が変動しなかったら、高校で習った無限等比級数の和だ!」と思い出すかもしれません。
大事な点は、10日の指数平滑移動平均線とは、10日間だけのデータを使っているのではありません。手に入る全てのデータで計算します。
それなら、N日指数平滑移動平均線のNは何に使われているのでしょう?
となり、Aとαを決めるのにNは使われます。
例えば、10日の場合は
A=2/11 α=9/11になります。
ところで、この値をA{1+α+α^2+α^3+・・・・・・・・・}にいれて、計算すると1になります。
平均計算ですから、当然必要な性質です。
さて、例によってExcelで計算しましょう。10日の指数平滑移動平均(EMA)の算定です。
- 例によってデータはyahoo
の時系列から取ります。デイリーにチェックを入れ、50件のデータを表示させます。使うのは、日付、終値、出来高ですが、表を丸ごとExcelのシートにコピー&貼り付けすると楽です。
今回は、データ数は、50件をとってください。 A〜G列に50個のデータが入りました。新しいデータが上に来てますね。終値は、E2〜E51に入っています。今回は、表の下の方から作っていきます。
- I43〜I51は、計算できないので空欄です。E42〜E51の10個の終値を使ってI42列に最初の平均をいれます。これは、普通の単純移動平均を入れればよいでしょう。
すなわち、I42に=AVERAGE(E42:E51)をいれます。
- さて、次に一日たったI41に何をいれるか?ここが、最大のポイントです。前日の指数平滑移動平均にαをかけて、影響力を一日分弱めます。そして、最新の終値E41にAをかけたものを加えます。すなわち、I41に=I42*9/11+E41*2/11をいれます。
- あとは、同じ。I40に=I41*9/11+E40*2/11をいれます。I2までオートフィルを使えばよいですね。
さて、下は村田の株価、EMA、単純移動平均線のグラフです。このEMAは、単純移動平均線より敏感に反応します。
こんな計算面倒だし、そんなに価値ないな、と思われるかも知れません。
ところが、EMAには、素晴らしい応用法があるのです。
◆◆この株価の動きに敏感な性質を使って、上昇か下降かのトレンドを見極める◆◆
◆◆最強のハイテク兵器になるのです。◆◆
◆◆明日はトレンドの判定法、MACDの解説をします。◆◆
MACDは、トレンド判定の 王様 |
短期線が長期線より上にある場合は上昇トレンド、というのはテクニカルの基本ですね。
短期のEMAから長期のEMAを引き算し、株価で割り算し%表示したものが、MACD(Moving Average Convergence Divergence)です。
MACD={EMA(短期)ーEMA(長期)}÷(今日の終値) |
EMA(短期)=B{(今日の終値)+β(1日前の株価)+β^2(2日前の株価)+・・・}
EMA(長期)=A{(今日の終値)+α(1日前の株価)+α^2(2日前の株価)+・・・}
ここで、A=1-αとB=1-βを代入します。
MACD×(今日の終値)を計算しましょう。長い式なので、項目別に係数を計算してみましょう。
したがって、次のように書き直せます。
下の式は、MACDの持つ意味を表していて、重要です。
穴があくほど、よ〜く眺めてください。
MACD×(今日の終値)={(今日の終値)-(1日前の株価)}(α-β)
右辺の1項目の文字は、今日の変動を表しています。2項目は、1日前の変動、3項目は2日前の変動・・・・・
MACDでは、新しい変動ほど重要視します。しかし、古い変動も無視はしません。大昔の変動も微小ですが、考慮しているのです。
その区別をα^m-β^mの次数を変えることで調整しているのです。1日経過するごとに、次数が1増えて、その影響が少なくなるのです。
長期と短期に何日を選んだら良いかは、株価変動の一般的な周期によって変ってきます。 lycosのチャートを参考にすると、一般的には、短期に5日、長期に10日を採用しているようです。
下を計算すると、今度は1になりません。
(α-β)+(α^2-β^2)+(α^3-β^3)+・・・・・=α/(1-α)-β/(1−β)=2.5
MACDは、一日あたりの株価の上昇率を示した平均値ですが、その値はこの例では2.5倍、拡大されています。
この事実も、MACDを実戦で使う際、重要でしょう。
日付 | 株価 終値 | EMA(10) | EMA(5) | MACD |
---|---|---|---|---|
2001年2月23日 | 11,060 | 11,378 | 11147 | -2.09% |
2001年2月22日 | 11,000 | 11,449 | 11190 | -2.35% |
2001年2月21日 | 11,050 | 11,549 | 11285 | -2.39% |
2001年2月20日 | 11,530 | 11,660 | 11403 | -2.23% |
2001年2月19日 | 11,380 | 11,689 | 11339 | -3.07% |
2001年2月16日 | 11,410 | 11,757 | 11319 | -3.84% |
2001年2月15日 | 11,200 | 11,835 | 11274 | -5.01% |
2001年2月14日 | 10,560 | 11,976 | 11311 | -6.30% |
2001年2月13日 | 10,990 | 12,290 | 11686 | -5.50% |
2001年2月9日 | 11,210 | 12,579 | 12034 | -4.87% |
2001年2月8日 | 11,610 | 12,884 | 12446 | -3.77% |
2001年2月7日 | 12,590 | 13,167 | 12863 | -2.41% |
2001年2月6日 | 12,620 | 13,295 | 13000 | -2.33% |
2001年2月5日 | 12,830 | 13,445 | 13190 | -1.98% |
2001年2月2日 | 13,110 | 13,581 | 13370 | -1.61% |
2001年2月1日 | 13,220 | 13,686 | 13500 | -1.40% |
2001年1月31日 | 13,620 | 13,789 | 13640 | -1.10% |
2001年1月30日 | 13,500 | 13,827 | 13650 | -1.31% |
2001年1月29日 | 13,320 | 13,900 | 13726 | -1.31% |
2001年1月26日 | 13,300 | 14,029 | 13928 | -0.75% |
2001年1月25日 | 13,950 | 14,190 | 14243 | 0.37% |
2001年1月24日 | 14,190 | 14,244 | 14389 | 1.02% |
2001年1月23日 | 14,700 | 14,256 | 14488 | 1.58% |
2001年1月22日 | 14,830 | 14,157 | 14383 | 1.52% |
2001年1月19日 | 14,440 | 14,008 | 14159 | 1.05% |
2001年1月18日 | 14,290 | 13,912 | 14018 | 0.75% |
2001年1月17日 | 13,900 | 13,828 | 13883 | 0.40% |
2001年1月16日 | 14,180 | 13,811 | 13874 | 0.44% |
2001年1月15日 | 14,060 | 13,730 | 13721 | -0.06% |
2001年1月12日 | 13,540 | 13,656 | 13551 | -0.77% |
2001年1月11日 | 13,170 | 13,682 | 13557 | -0.95% |
2001年1月10日 | 13,350 | 13,796 | 13751 | -0.34% |
2001年1月9日 | 14,050 | 13,895 | 13951 | 0.40% |
2001年1月5日 | 14,360 | 13,860 | 13902 | 0.29% |
2001年1月4日 | 13,830 | 13,749 | 13673 | -0.56% |
どうですか?
各時点でのトレンドの強さを定量的に俊敏に計算するでしょう。
不満な場合は、日数を変えてみてください。
MACDには、他にもプロが好んで使う、有名な方法があります。
簡単に、紹介だけしますと、EMA(20日)とEMA(5日)の乖離でMACD(5-20)を作ります。そして、シグナルと名づけられた、MACD(5-20)の9日移動平均線を作ります。もちろん、これらの正負の値も重要ですが、MACD(5-20)とシグナル(9)のゴールデンクロスやデッドクロスを、売り買いの参考にしようという方法です。乱高下の激しい相場に向いているそうです。
さて、計算はいやだという人は、Lycosのチャートに行ってください。
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でも、このLycosの説明は、どこかへんですよ。
「5日線?が緑、10日線?が赤」と書いてあるのです。
私の計算が正しければ、緑はMACD(5-10)、赤はそのシグナル(日数不明)のような気がしますがね。
◆◆よく理解できません・・・・◆◆
◆◆
テクニカルシリーズは、来週土曜日に再開予定。◆◆
◆◆平日は読み物を書いています。◆◆
MACDの致命的欠陥と 新提案・指数平滑変動率 |
MACDはトレンド判定の王様である、と先週紹介したばかりですが、昨夜からいろいろ数値を変えて過去の株価のシュミレーションしてみると、どうもMACDは、上昇率を表す数字として欠陥があるような気がしてきました。
いろいろ調べるうちに、ついに致命的な欠陥を発見しました。
MACDは、(m-1)日前の変動率に(α^m-β^m)を乗じたものを総合計したものであることは、先週紹介しました。mに1〜10を代入すると次のようになります。
MACD(5-10) | 指数平滑変動率(10日) | |||
---|---|---|---|---|
説明 | 計算式 | 計算値 | 計算式 | 計算値 |
今日の変動率に乗じる係数 | α-β | 0.151515152 | A | 0.181818182 |
1日前の変動率に乗じる係数 | α^2-β^2 | 0.224977043 | A×α | 0.148760331 |
2日前の変動率に乗じる係数 | α^3-β^3 | 0.251412194 | A×α^2 | 0.121712998 |
3日前の変動率に乗じる係数 | α^4-β^4 | 0.250594264 | A×α^3 | 0.099583362 |
4日前の変動率に乗じる係数 | α^5-β^5 | 0.234960589 | A×α^4 | 0.081477296 |
5日前の変動率に乗じる係数 | α^6-β^6 | 0.212193095 | A×α^5 | 0.066663242 |
6日前の変動率に乗じる係数 | α^7-β^7 | 0.186914274 | A×α^6 | 0.054542653 |
7日前の変動率に乗じる係数 | α^8-β^8 | 0.161797688 | A×α^7 | 0.044625807 |
8日前の変動率に乗じる係数 | α^9-β^9 | 0.138291812 | A×α^8 | 0.036512024 |
9日前の変動率に乗じる係数 | α^10-β^10 | 0.117089103 | A×α^9 | 0.029873474 |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | ||||
総合計 | 2.5 | 1 |
表のピンクの部分に注目してください。
MACDでは、今日の変動率にかける係数より、1日前にかける係数の方が大きいのです。これは、致命的な欠陥です。人間誰しも、今日の変動率のほうを、昔の変動率より重視します。
そこで、当ホームページでは、MACDに替わる指標を世に問いたいと考えます。 その名を「指数平滑変動率」と名づけましょう。 |
指数平滑変動率(10日)=A{(今日の変動率) |
先週紹介した指数平滑移動平均(EMA)の株価の値を毎日の株価の変動率に置き換えただけですね。
こちらの方が、考え方は、すっきりしているし、正確です。こちらを使うことに決めました。
日付 | 株価 終値 | MACD(5-10) | 指数平滑変動率(10日) |
---|---|---|---|
2001年2月23日 | 11,060 | -2.09% | -0.55% |
2001年2月22日 | 11,000 | -2.35% | -0.80% |
2001年2月21日 | 11,050 | -2.39% | -0.88% |
2001年2月20日 | 11,530 | -2.23% | -0.14% |
2001年2月19日 | 11,380 | -3.07% | -0.47% |
2001年2月16日 | 11,410 | -3.84% | -0.52% |
2001年2月15日 | 11,200 | -5.01% | -1.05% |
2001年2月14日 | 10,560 | -6.30% | -2.63% |
2001年2月13日 | 10,990 | -5.50% | -2.34% |
2001年2月9日 | 11,210 | -4.87% | -2.42% |
2001年2月8日 | 11,610 | -3.77% | -2.20% |
2001年2月7日 | 12,590 | -2.41% | -0.96% |
2001年2月6日 | 12,620 | -2.33% | -1.11% |
2001年2月5日 | 12,830 | -1.98% | -1.00% |
2001年2月2日 | 13,110 | -1.61% | -0.75% |
2001年2月1日 | 13,220 | -1.40% | -0.73% |
2001年1月31日 | 13,620 | -1.10% | -0.24% |
2001年1月30日 | 13,500 | -1.31% | -0.49% |
2001年1月29日 | 13,320 | -1.31% | -0.89% |
2001年1月26日 | 13,300 | -0.75% | -1.13% |
2001年1月25日 | 13,950 | 0.37% | -0.34% |
2001年1月24日 | 14,190 | 1.02% | -0.04% |
2001年1月23日 | 14,700 | 1.58% | 0.72% |
2001年1月22日 | 14,830 | 1.52% | 1.08% |
2001年1月19日 | 14,440 | 1.05% | 0.72% |
2001年1月18日 | 14,290 | 0.75% | 0.64% |
2001年1月17日 | 13,900 | 0.40% | 0.16% |
2001年1月16日 | 14,180 | 0.44% | 0.64% |
2001年1月15日 | 14,060 | -0.06% | 0.59% |
2001年1月12日 | 13,540 | -0.77% | -0.13% |
2001年1月11日 | 13,170 | -0.95% | -0.78% |
2001年1月10日 | 13,350 | -0.34% | -0.66% |
2001年1月9日 | 14,050 | 0.40% | 0.30% |
2001年1月5日 | 14,360 | 0.29% | 0.85% |
2001年1月4日 | 13,830 | -0.56% | 0.19% |
さて、上の表は、村田製作所について、MACD(5-10)と指数平滑変動率(10日)を計算したものです。
プラス転換、マイマス転換、両方とも指数平滑変動率のほうが1〜2日早くサインが出ています。
この敏感性は、実戦では収益に大きく影響します。
プラス転換で買いマイナス転換で売り、という単純なモデルを使った場合を考えます。(このモデルがいいかどうかは、疑問ですが)
MACD(5-10)では、1月6日14180円で買い、13300円で売り(880円の損害)となりますが、指数平滑変動率(10日)では、14060円買いの14190円売りとなり、わずか130円ですがプラスになります。
私は、現実の株取引で2月15日、RSIを根拠に、11130円で村田を買い、
後に10400円で損切りしました。
◆◆この表では2月15〜20日の値上がりでは、指数平滑変動率はマイナスで◆◆
◆◆トレンドは変らず、買うべきタイミングでないと出ています。◆◆
◆◆この種の指標の優れた点だと思います。◆◆
◆◆遅行性がなく、小変動に惑わされない投資家の羅針盤ですね。◆◆
(参考)なお、指数平滑変動率は、株式用のトレーディングシステム開発ソフト「パイロン」に採用され、自動計算できるようになりました。
ボリューム・レシオ(前編) |
一定期間(例えば10日)で値上がりした日の出来高の合計を、一定期間の出来高の合計で割ったものを、ボリューム・レシオ(VR)といいます。すなわち、
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RSIと計算式は、よく似ています。つまり、株価の変動幅の替わりに、出来高を代入しただけですね。
VRとRSIとを同じグラフに表すと、多くのことがわかると言われています。
参考書によれば、株価と、これに先行すると言われている出来高を、同じ座標軸で比較することにより、多くの有用な予測が可能なのです。
この二つの指標は、ほぼ同じように動きます。むしろ、違う動きをした時の解釈が重要なのだと思います。
一例だけ、ご紹介しましょう。
ある日、RSI=0.25でVR=0.5とします。これは、何を示しているのでしょうか?
- RSIが、0に近いというのは、10日間、値下がり幅の方が値上がり幅より大きかった。売られすぎで、買いのサインだということは、以前述べました。
- VR=0.5というのは、下がった日の出来高と上がった日の出来高が拮抗して、変わらないということです。
この二つを考慮すると、
「値上がりの日。出来高は多かったが、その割には株価は上がらない。」
「値下がりの日。出来高は少なかったのにもかかわらず、大きく値段が下がった。」
という事実がわかります。
珈琲掲示板に登場するある方は、これを「買い疲れ」と表現しています。
このサインが出たとき、この先、株価はどうなるでしょう?
このサインの後、下降トレンドになった例をいくつか知っています。私は、この条件では、RSIが低くても買いを見送るべきだと、信じています。
◆◆これについての詳しい考察を次回発表します。◆◆
◆◆
この主張に、矛盾する例を経験された方は、掲示板でお知らせください。◆◆
ボリューム・レシオ(後編) |
結論を先に書きます。
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前者は、例えば、下値に価格支持線があり、価格が下がると買い手が無数に出てくるような状況です。
後者は、例えば、上値に価格抵抗線があり、価格が上がると売り手が無数に出てくるような状況です。
何故そうなるか?
数式の嫌いな人は、以下は、読み飛ばしてください。
RSI>VR
A/(A+B)>a/(a+b)
左辺-右辺=A/(A+B)-a/(a+b)=(Ab-Ba)/(A+B)(a+b)>0
分母は、正なので、
Ab-Ba>0
従って、b/B>a/A この式は、重要です。意味をよ〜く考えましょう。 |
左辺は、株価を一円下げるのに必要なエネルギー(すなわち、出来高)を示しています。
つまり、一円下げるのに必要なエネルギー(出来高)が、 一円上げるのに必要なエネルギーより大きいのです。 |
◆◆簡単に言うと、上がり易いというわけです。◆◆
◆◆実例を以下に示します。◆◆
下のグラフは、三洋電機の株価とRSIとVR(10日)のグラフです。
(株価は、同じ座標で書けるように、平均株価で割り算して無次元化しています。)
2月13日、RSI(0.265)とVR(0.501)の差が最大になり、この後三洋電機の株価は暴落しているのがわかると思います。
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