■J_Coffeeの徒然草(6巻)■

---目次---
  • ジップの法則と1/fゆらぎ(前編)
  • 鴻池新六の清酒開発
  • ジップの法則と1/fゆらぎ(後編)
  • バタフライ効果と株式市場
  • ハゲタカ投資家とチャプター11
  • カラクリ儀右衛門の開発への情熱
  • 今の流れは、「一ヤリ店カイ相場」
  • 金本位制と日本の参加
  • 元都知事・鈴木俊一の都民への贈り物(前編)
  • 元都知事・鈴木俊一の都民への贈り物(後編)
  • 都庁移転をごねた都議会議員の贈り物
  • イスラムの教えと日本の低金利(前編)
  • イスラムの教えと日本の低金利(後編)

  • (2001/1/27)
    ジップの法則と1/fゆらぎ(前編)

    昔ジップと言う人が、どの英単語が一番使用頻度が多いか調べたそうです。

    トップは、皆さんも想像つくと思います。ダントツの1位は、theで、全体の実に10%を占めました。 2位は、ofの5%、3位は、andの3.3%になっています。

    ジップの偉い点は、この分布から経験法則を導き出したことです。
    ジップの主張は、「シェアは、順位に反比例する。」というのです。

    2位のofのシェアは、10%÷2=5%
    3位のandのシェアは、10%÷3=3.3%

    (n位のシェア)=(1位のシェア)/n  (ジップの法則

    この法則は、英単語だけでなく多くのものにあてはまるといわれています。例えば、昨日紹介した、2000年のWDM伝送装置のメーカー別シェアは次のとおりです。 右側の数字は、ジップの法則による理論値です。

    メーカー名実際のシェアジップの法則
    1位Nortel 38% 38%
    2位Lucent14% 19%
    3位富士通 12% 12.7%
    4位Tellabs 10% 9.5%
    5位Alcatel9% 7.6%
    6位Cisco 6% 6.3%
    7位NEC 5%5.4 %
    8位Ciena 3% 4.8%

    どうですか?この法則、理論的根拠は、あまりないようですが、驚くほど一致していますね。

    シェアトップの企業の株を買えとの勧めが昔からありますが、2位の2倍の売上を占めるのが自然なら、良い教えかもしれません。

    この法則を信用すると、企業の自然淘汰が進めば、独占企業が必ず誕生するのです。

    ◆◆明日は、心地よい、そよ風や滝の音の秘密、◆◆
    ◆◆「1/fのゆらぎ」を発表します。◆◆

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    (2001/1/28)
    ジップの法則と1/fゆらぎ(後編)

    株価の変動は、いろいろな周期の波が合成されています。

    デイトレーダーの追っている値動きは、分刻みの高周波成分です。
    長期投資家バフェットが追っているのは、上がりきるのに何年もかかる株価の低周波成分です。

    数学者フーリエは、
    「すべての変動(株価を含め)は、周波数の異なる無限の規則正しい波を合成したものにすぎない。」
    ことを証明しています。

    デイトレーダーとバフェットを比較して、どちらが効率がよいかは、株価の周波数分布(パワースペクトル)がどうなっているかにかかっています。

    高周波成分が多ければデイトレーダーが、低周波成分が多ければバフェットの方法が、成功するでしょう。

    さて、パワースペクトルが周波数に反比例しているのが「1/fのゆらぎ」です。

    昨日のWDM伝送装置メーカーのシェアに例えるなら、低周波成分がトップメーカーのノーテル社、高周波成分が下位のNECやCienaですね。

    そよ風の強さは、一定でなく変動しています。 むかし、そよ風を真似して1/fでゆらぐ扇風機を発売したメーカーがあったと思います。

    自然界に存在する「1/fのゆらぎ」は、滝の音です。
    滝の音は、人間にとって心地よいそうです。

    生まれたばかりの赤ちゃんに滝の音を聞かせます。にっこり微笑んで、安心して眠るそうです。
    お母さんの子宮の中で聞いた音と似ているから、との説が有力です。

    この場合のトップメーカーの低周波成分は、お母さんの心臓の鼓動です。
    少数派の高周波成分は、「ザー」という雑音です。

    ◆◆株価も1/fゆらぎなら、投資家にとって大儲けの簡単な夢の世界ですね。◆◆
    ◆◆ 耳を澄ましてください。◆◆
    ◆◆心臓の鼓動、聞こえてきませんか?◆◆

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    (2001/2/1)
    ハゲタカ投資家と
    チャプター11

    日本も民事再生法が施行され、経営者が変らずに再建がし易くなったそうです。 この法律、中小企業が使いやすいとの看板で発足したはずですが、最近の大企業の倒産の際に必ず適用されています。

    しかし、アメリカには、日本にない画期的な倒産に関する制度があります。

    それが、1978年に施行された再建型手続き「連邦倒産法チャプター11」なのです。
    そして、この制度とともに、アメリカで増加しだしたのが、ハゲタカ投資家です。

    アメリカでは、企業の経営が傾くと、死臭をかぎつけたハゲタカ投資家が、集まってきます。そして、ハゲタカは、経営の悪化した企業の債権を安く買い集めます。

    債権者に対する支払いが不能になると、チャプター11の申請がなされます。すると会社の経営権は、経営者と株主から債権者(つまり、ハゲタカ投資家)に移ってしまうのです。債権の一部は切り捨てられます。しかし、彼らは、債権を安く買っていますから平気です。

    新規の株式が発行され、債権者に無償で割り当てられるそうです。債権者が、経営者を新しく連れてくることが多いようです。

    つまり、債権者主導による再建型手続きが、最大の特色なのです。

    ハゲタカ投資家というと、暴力団関係者みたいですが、実態は頭脳集団、高度な判断を要求される投機を、彼らは勝ち抜いているのです。

    経営再建に成功すれば、買入価格の何倍もの資金が回収され、大儲けができるのです。
    しかし、一歩間違えば、債権は紙くずです。

    市場原理が支配する、なんと効率的な制度でしょう。

    日本の銀行が建設会社に実施する債権放棄より、遥かに優れています。 ハゲタカ投資家達は、バブル崩壊後の不良債権処理を狙って、日本にも進出しています。

    ◆◆長銀(新生銀行)を1200億円で買い取ったリップルウッド。◆◆
    ◆99年10月、倒産した日興電機工業を大和證券とともに買収したウィルバー・ロス。◆
    ◆◆ 彼らは、ハゲタカ投資家です。◆◆

    ◆◆ 日本は、何故この制度をつくらないのでしょうか?◆◆
    ◆◆不良債権の処理が進むと思います。◆◆

    (参考文献) 「ハゲタカ投資家」 ヒラリー・ローゼンバーク著 日本経済新聞社

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    (2001/2/5)
    今の流れは、
    「1ヤリ店カイ相場」

    今日、武富士をすべて売り払って、私の持ち株は、限りなくゼロに近づいています。 2〜3月は、持ち合い解消の季節、買うタイミングではありません。膨大な裁定取引解消売りも恐い。

    東証一部銘柄には、手を出さないほうが良いのではないでしょうか。

    かといって、株のホームページの管理人としては、株を少しは持っていたいところ。
    何か買いたい。しかし、仕手株はきらい。

    そこで、アルゼとか白銅の値上がりぶりを見ているうちに、ふと思い出したことがあります。

    私が、株を始めるずっと以前、昭和30年代か40年代に、「1ヤリ2カイ相場」というのがあったそうです。

    需給関係が悪く、値下がりする東証部の株を売って、人気のある東証部の株に乗り換えるのが流行った時代があったのです。

    この時代と今が似ているような気がします。マザーズ、ナスダックは、手垢がついています。持ち合い解消売りが恐くない、店頭または東証二部の株が、人気が出るのではないでしょうか?

    「1ヤリ店カイ相場」という命名は、どうでしょう。

    それで、お前何を買うのかといわれそうですね。

    特殊事情のないPERの12倍以下の店頭か東証二部株なら、何でもいいと思います。例えば、住商オートリースなんてどうでしょう。(自己責任ですよ)

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    (2001/2/6)
    元都知事・鈴木俊一の
    都民への贈り物(前編)

    私は、大蔵省(どうも財務省と言う言葉になじめない)は、嫌いですが、感心することが一つだけあります。

    あれだけの権力を握っていながら、大蔵省の建物は古くて、みすぼらしい。人生の長い期間を費やす仕事場に余分な予算を使いません。主計局の人は、偉い。

    それと比較して、あの新宿にそびえ建つ、豪華なツインタワー・都庁には、私は反感を抱きます。都庁なんかに行ったことは、2〜3回しかありません。新宿で一番の高層ビルの都庁の役人様は、大蔵省より偉いのでしょうか?

    1991年4月に完成した東京都庁舎は、
    なんと1569億円もの費用がかかったそうです。
    そして、維持費に年間約60億円もかかるということです。

    しかも、元の都庁のあった場所には、おかしなガラスの建物を作ってしまいました。 庶民が、広い家に引っ越す場合、元の家と土地は売り払って、資金の一部にするのが当然です。

    もっと腹の立つ、建物があります。その名は、東京都江戸東京博物館といいます。

    JRの両国駅の近くにあります。都民なら、入場料も安いので一度ぐらい行ったことがあるでしょう。江戸東京400年の歴史と文化をかえりみる博物館だそうです。面白くないので、二度行く人は少ないでしょう。

    この建物なんと、530億円もかかったのです。
    あの都庁の3分の1ですぞ!

    93年3月に完成してから、1000万人の入場者があったそうです。
    入場料は、240円〜600円です。6年間で、たったの42億円の収入しかないらしい。
    維持費を考えると毎年かなりの赤字のはずです。

    建設費も、毎年の赤字も、都民や企業が税金で負担しているのです。この施設、都の役人の退職後の格好の天下り先になっているとのうわさです。

    こうした馬鹿馬鹿しい施設は、すべて鈴木俊一という官僚出身の都知事が造ったのです。

    ◆◆とんでもないやつだ!◆◆
    ◆◆彼の贈り物は、これだけではありません。◆◆
    ◆◆この続きは、明後日に発表します。◆◆

    (追伸)株買いました。

    (参考文献) 「自治体破産」  神野直彦 分権・自治ジャーナリストの会

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    (2001/2/7)
    元都知事・鈴木俊一の
    都民への贈り物(後編)

    営団地下鉄東西線「木場駅」3番出口より徒歩15分も歩いた都立木場公園内に、その問題の建物は、あります。 東京都現代美術館は、バブル崩壊から5年も経過した、1995年3月に完成しました。購入した絵画の価格が高すぎると週刊誌が指摘したことがあります。

    東京都現代美術館には、東京都の歳入が激減するにもかかわらず、
    416億円もの巨費を投じられたのです。

    不便な場所にあり、入場者も江戸博物館に比べて遥かに少ないはずです。

    途中で、何故中止できなかったのでしょうか?
    元都知事・鈴木俊一の最大の疑惑の一つでしょう。

    この他、東京都芸術劇場(90年10月、313億円)、東京体育館(90年4月、226億円)、辰巳国際水泳場(93年8月、181億円)、東京武道館(90年2月、81億円)

    これらの建物を、バブル期の歳入の増加を頼みに、造りまくったのです。歳入が増えて使いきれないと言って、必要性に乏しいものに無駄使いしたのです。

    臨海副都心の惨状にも、恐ろしさを感じます。空き地は目立ちますし、土地の値下がりから、賃料も計画どおり得られません。 羽田沖会計や埋め立て会計から臨海会計に何千億円も注入して、ごまかしているようですが、いずれ問題になるでしょう。

    臨海副都心にビルを建てた都出資の第三セクターも赤字が増加する一方で、都の支援がさらに必要と思われます。

    本社を東京に置く大企業の法人事業税などが入る東京都は、財政基盤が強く、地方交付税を受けない唯一の都道府県です。

    その豊かなはずの東京が、7兆円の都債残高を抱えて、財政危機に陥っています。この他、「1兆円の隠れ借金」があると、石原新知事は、言っています。

    いったい、誰のせいでしょうか?

    平成13年度の都の税収は、企業の一時的な業績回復から改善しますが、2〜3年後、東京都は、財政再建団体(企業でいう倒産)に転落する可能性があるともいわれています。

    そうなれば、国の基準以上に東京都が行っていた福祉は、すべてカットされます。私立学校の補助金、老人医療費補助、シルバーパスなどの福祉が切り捨てられます。道路、都立高校の建替え、清掃工場の建設なども進まなくなるでしょう。

    一方、都立高校の授業料、小規模住宅の都市計画税、都営住宅の家賃などは、大幅に値上げされるでしょう。

    ◆◆この人は、財政危機のA級戦犯だと私は思います。◆◆

    ◆◆1995年4月、無駄遣いを続けた鈴木俊一は、◆◆
    ◆◆何もしない都知事・青島幸男にバトンを渡しました。◆◆
    ◆◆石原慎太郎さん、尻拭い大変ですが、頑張ってください。◆◆

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    (2001/2/23)
    都庁移転をごねた
    都議会議員の贈り物

    前2回の報告で、90年に、多くの無駄遣い施設が東京都によって建設された事実をご紹介しました。

    何故、これらの施設が建設されたか?ようやく謎が判明しました。
    すべて、あのバブルの塔・新宿都庁に原因があったのです。

    都庁が新宿に移転する際、「都庁は、丸の内に建設すべきだ。」と反対する議員達が与党内に15人(丸の内派)ほどいました。

    丸の内派は、有楽町に近い東京都の東部、すなわち、墨田区、葛飾区、足立区、江戸川区、豊島区を地盤とする与党の都議でした。 都庁移転には、都議会の出席者の2/3の賛成を必要とします。

    当時与党は96人(自民57人、公明29人、民主クラブ10人)、野党は31人(共産19人、社会12人)でした。

    与党内の15人が、寝返れば新宿移転は、可決できません。
    そこで、丸の内から都庁の消える見返りとして懐柔策がとられます。

    葛飾区の議員には地域総合病院(これは、まともな施設)、
    墨田区には江戸東京博物館

    足立区には東京武道館
    江戸川区には葛西臨海水族館

    豊島区には東京芸術劇場が、
    裏取引のため、気前よくプレゼントされたのです。

    無駄遣い施設予算が、ばら撒かれた見返りに、都庁新宿移転の条例案は、昭和60年9月、88対31で可決されたのです。丸の内派の一部の8人は欠席しました。

    こんな状況ですから、旧都庁の跡地も売却できるはずはありません。

    「跡地は、民意を反映させて有効利用すること」との付帯決議がついたのです。
    丸の内跡地は東京国際フォーラムという、くだらない赤字たれ流し施設になります。天下り先の増えた役人は、喜びました。

    都議会議員のいう民意とは、こんなお粗末な内容なのです。

    ◆◆長野県知事の田中康夫さん。◆◆
    ◆◆どんなに孤立しても、議会や役人に丸め込まれては、いけません。◆◆
    ◆◆彼らに任せると、こんな風になるのです。◆◆
    ◆◆ 多くの国民があなたを応援していますので、初心を貫いてください。◆◆

    (参考文献) 「都知事の椅子」  神 一行

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    (2001/2/9)
    イスラムの教えと
    日本の低金利(前編)

    味の素が、インドネシアでイスラム教が禁止している豚を調味料の原料の一部に使用して、大問題になりました。 この程度のことで、これほどの騒ぎになるのかと驚いた人も多かったと思います。
    イスラム教には、他にも人間を拘束する戒律が多く規定されています。

    イスラム教徒は、毎年ラマダン(断食)をしなければなりません。

    豊かな人が腹がすく経験をすることで、貧しい人の気持ちも理解することができます。 豊かな人は貧しい人に喜捨しなくてはならない、という真理を自然に悟るのです。ラマダンは、このために必要な戒律なのだと思います。

    さて、これからが本題です。

    イスラムの銀行は、宗教上の理由から利子を取ることが出来ません。

    金を貸せる者は豊かな人、金を借りる者は貧しい人です。

    金を貸して利子を取ると、貧しい人から豊かな人に富が移動する。社会がますます不平等になります。 借りた者が始めた事業が、成功しようが失敗しようが、借金は、元利合計して返済しなければなりません。 金を貸す者は、まったく労働しないで、不当な所得を得てしまう。

    アラーの神のもとで、平等な世界実現を目指したイスラム教は、利子を禁止したのです。

    念のため言うと、私は無神論者。読者を宗教に勧誘する気はまったくありません。

    正直に言うと、現代社会において、かなり無理のある銀行制度と思いますが、気持ちはわかりますね。

    ◆◆イスラムの銀行は、どのようにしてお金を稼いでいるのでしょうか?◆◆

    ◆◆ それを知るには、イスラム教が成立する以前にシルクロードを旅した◆◆
    ◆◆アラビアの隊商貿易について話さなければなりません。◆◆
    ◆◆ この続きは、明日発表します。◆◆

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    (2001/2/10)
    イスラムの教えと
    日本の低金利(後編)

    駱駝に荷物を乗せて灼熱の砂漠を越えて、交易をしたアラビア商人は、資本家から足りない資金を借りていました。 彼らは、ムダーラバと呼ばれる契約をお金持ちの資本家と結びます。

    資金を提供したお金持ちは、金利はとれません。
    交易の利益や損失は、交易商人と資本家との間で
    一定の比率で分けられました。

    盗賊に会って、すべての商品を失った場合、資本家の資金はまったく返還されなくても良かったのです。

    元本の保証のない投資信託と似ているかもしれません。
    ムダーラバの精神は、イスラム法に取り入れられています。

    イスラム銀行が企業に対し、成功報酬で金を貸します。この他、安価な手数料は、認められていますが、金利は受け取りません。元本の保証もないのです。

    さすがに、預金者に対しては、イスラム銀行は元本を保証しているようです。しかし、多くは当座預金で利息はつかず、つく場合も低配当です。敬虔なムスリムは、それでも喜んでイスラム銀行に預金します。

    中央銀行の政策によって金利が変動することもほとんどありません。サウディでは、80年代、アメリカの高金利政策により、資金が海外に流失して混乱がおきました。 しかし、経済的混乱よりも、宗教的な信念の方が優先されたのです。

    さて、日本の公定歩合は、0.15%引き下げられ、
    0.35%の史上最低金利になりました。

    預金利息はないのと同じです。
    日本には、イスラム教徒は、ほとんどいません。
    それにもかかわらず、不況対策の長期化から、金利を禁止したイスラムの理想社会が日本で実現しています。

    金利のない不思議な世界・・・

    ◆◆高金利を求めて資金も外国にどんどん逃げますね。◆◆
    ◆◆しかし、アラーの神の理想実現のために、◆◆
    ◆◆預金者は我慢しているように見えますね。◆◆

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    (2001/2/16)
    鴻池新六の清酒開発

    山中鹿之助は、尼子家の再興を夢みて挙兵し、乾坤一擲の戦いを大国・毛利に挑んだ武将です。そして、惜しくも敗れ去ったのです。

    彼には、山中新六という息子がいました。彼は、敗戦の後、摂津鴻池まで逃亡します。この地で、彼は、武士を棄て素性を隠すため、鴻池新六と名乗ります。そして、酒作りに熱意を燃やしました。

    当時の酒は、すべて濁り酒(どぶろく)です。新六は、「水のように透明な酒を造れないか」と思案します。

    紙で漉してみます。酒粕の大部分は除去できますが、酒粕の微粒子が紙の目を通り抜け、どうしても濁りをとることができません。

    新六のところで、性格のよくない男が働いていました。 ある日、彼は、この男の日頃の行いを注意します。男は逆恨みして、その日の夜、店を飛び出す決心をします。どうせ去るなら、大損害を与えてやれ。 男は、酒の大樽の中めがけ、小便をします。

    そして、部屋の隅にあった「白い灰のようなもの」を濁り酒に入れます。

    さて、翌朝になりました。新六は、男の出奔に気が付きます。直ぐに酒の大樽が心配になります。

    「やられた」と彼は、叫びました。樽の淵には、小便の跡があり、純白の粉があたり一面撒かれています。 新六は、樽の底を覗き込みます。

    その瞬間・・・

    「あっ」と驚きます。

    酒が澄み渡り、大樽の底が、はっきりと見えるのです。

    純白の粉が、不思議な力で、酒粕の微量子を凝集させ、大きくなった酒粕の塊が沈殿したのです。

    彼は、店中の人から情報を集めて、純白の粉の正体を調べます。
    ついに判明。それは、消石灰(水酸化カルシウム)でした。

    この事件をヒントに、新六は新商品の研究開発に没頭します。
    1600年、彼は、ついに清酒「相生」の開発に成功します。

    清酒は、17世紀最大のヒット商品になります。将軍も大名も清酒の芳醇な味が忘れられません。

    消石灰とミョウバン(硫酸アルミニウム)を4対1に配合して酒の濁りを沈殿させる。

    それは、鴻池だけが知っていた「清酒作りの秘法」だったのです。

    新六は、飛ぶように売れる清酒を船で江戸へ運びます。江戸廻船の始まりです。

    ◆◆そして、海運業に進出したことで鴻池家は、◆◆
    ◆◆江戸時代を通じて、三井家、住友家を凌ぐ豪商になったのです。◆◆

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    (2001/2/26)
    バタフライ効果と
    株式市場

    1961年、気象学者ローレンツは、コンピュータを使用して、気象の変化の数値計算を行っていました。初期値に0.506127を代入し、実験結果とよく合う、素晴らしい計算結果を出すことに成功します。

    やった!このモデルは使える。一応、間違いがないか検算してみよう。

    彼は、今度は初期値に0.506を入れます。
    小数点4桁以下は面倒なので省略してしまったのです。
    そして、コーヒーを飲みに行きます。

    さて、一時間が経過します。

    休憩から帰った、ローレンツは、計算結果を見てビックリ仰天します。前の結果と、まったく正反対の気象現象が生じていたのです。

    わずか、1/5000の初期値の違いで・・・・

    ローレンツの偉いところは、この経験をバタフライ効果の発見に導いてしまったことです。

    ある条件のもとでは、ブラジルの一匹の蝶の羽が引き起こした空気の乱れが原因で、
    地球の反対側の日本に台風をもたらすかも知れません。

    このジョークは、有名です。

    もっと身近なバタフライ効果を、ご紹介しましょう。

    幼児が乗る三輪車は、ペダルの踏み方で後ろに走ります。足踏みミシン(若い人は知りませんね)は、踏み方によっては逆回りします。

    この場合、ある条件とは、クランクが真上に来て、たまたま、回転が止まった瞬間です。

    さて、右に回るか?左に回るか?
    決めるのは、蝶の羽です。

    いったん回転方向が決まれば、そちらに勢いづき猛スピードで回転します。

    足踏みミシンは、最初に、フライホイルを軽く手前に回せば、正しく回りますね。

    さて、お待ちかね、株式市場に、この理論を応用すると・・・

    ある条件とは、多くの投資家が、暴騰か暴落か迷っているときですね。
    上に行きそうだし、下に行くかもしれない。
    皆が、流れる方向につこうと様子見をしている。

    ◆◆日銀や政府がトレーダーとしての能力が高く、◆◆
    ◆◆この瞬間を見抜ければ、タイミングよく政策を打ち出して恐慌は防げるのです。◆◆
    ◆◆ 暴落してから、無駄弾を撃ってはだめですよ。速水さん!◆◆

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    (2001/2/27)
    カラクリ儀右衛門の
    開発への情熱

    田中久重は、1799年久留米の鼈甲細工師の長男として生まれました。儀右衛門とは、彼の幼名です。9歳の時、誰にも開けられない筆箱を作り、家族を驚かせます。

    彼は、祭りの縁日の見世物で「茶を運ぶ人形」を観て、すっかり心を奪われます。

    「茶を運ぶ人形」は、人形のお盆の上にお茶を置くと、くるりと回って、お客の方を向き、お茶を運びます。お客が、お茶を飲み干し、空の湯飲みをお盆に置くと、また反転して主人の所に運びます。 この不思議な人形の謎を解き、同じ物をつくりたい。彼は、決心します。

    チャンスは、直ぐに到来します。彼の父が、機巧図彙(カラクリずい)という本を手に入れます。
    なんと、「茶を運ぶ人形」の図入りの解説が書いてありました。
    彼は、寝食を忘れ、3年後、鯨の髭をゼンマイにした「茶を運ぶ人形」を完成させます。

    子供の作った人形は、オリジナルの人形より、完成度が高かったのです。
    何時しか、彼は、カラクリ儀右衛門と呼ばれるようになります。

    その後、彼は多くの物を発明します。

    久留米がすりの絵模様、織り込み機
    菜種油の照明機「無尽灯」
    蒸気機関車と蒸気船の模型
    佐賀藩がアームストロング砲を作った時には、協力しています。

    そして、上京して政府の電信事業を請け負いながら、発明を続けます。

    彼の技術と精神は、養子の二代目・田中久重(大吉)に引き継がれます。

    二代目は、田中製作所を創業します。
    物作りに対する情熱に満ちた、この会社は、その後、大発展します。

    ◆◆そして、芝浦製作所と名前を変えます・・・・◆◆
    ◆◆カラクリ儀右衛門は、東芝のルーツだったのです。◆◆

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    (2001/2/28)
    金本位制と日本の参加

    ずっしりした重みと、錆びることのない永遠の輝き。
    金は、長い間、人類共通の最も安定した通貨でした。

    「いまさら何故、過去の遺物の金本位制の説明をするのか?」と言われそうですが、
    「最新の経済情勢のヒントとなるタイムリーな話題だ」と私は、信じています。

    「35ドルが金1オンスと交換される」ということが、金本位制の全てではありません。

    金本位制をとる国では、中央銀行は、通貨発行量の、例えば約40%の金準備を保有しなければなりません。

    逆にいえば、通貨発行量は、金準備高に応じて制限されてしまいます。

    もう一つ重要なことは、外国から金への交換要求があった場合、拒んではいけないのです。
    金輸出の自由化が、絶対条件なのです。

    もし、金本位制の国の貿易が赤字だと、どうなるでしょう?

    中央銀行の金準備が、海外に流失します。そして、それに応じて通貨発行量は、減らされます。 つまり、デフレが起こります。デフレが起きると物価が下がる。輸出競争力が出て貿易が黒字に向かうといわれています。

    さて、金準備がなくなる国はどうすれば、よいでしょうか。
    方法は、三つしかありません。

    1. 為替の引き下げ(つまり、金交換比率の引き下げを行う)
    2. 外国から借金をする。(その外貨を金に換える)
    3. 金の輸出を禁止する。(つまり、金本位制から離脱する。)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    1894年、日清戦争に勝利した日本は、3800万ポンドの賠償金を受け取ります。
    当時のアジアの貿易は、銀で支払われていました。
    銀でなく、ポンドで受け取ったのには、明確な狙いがありました。

    1897年(明治30年)、蔵相・松方正義の活躍により、「貨幣法」が公布されます。

    日本は、金1億700万円と、銀4900万円を基礎に、金本位制に参加したのです。
    かなりの部分は、賠償金のポンドを兌換して得た金でした。

    ◆◆日本は、この時から、欧米との激烈な経済戦争に正式に参加したのです。◆◆

    ◆◆ さて、金本位制の続きは「経済史に学ぶ」に場所を移して、◆◆
    ◆◆明日発表します。◆◆

    (追伸)米ドルMMF売却、三精輸送機、売りました。

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