■J_Coffeeの徒然草(17巻)■

---目次---
  • その後の紀伊国屋文左衛門(前編)
  • その後の紀伊国屋文左衛門(後編)
  • 脱税がばれた時(前編)
  • 脱税がばれた時(後編)
  • アドバンテストは、仕手株
  • 配当の確定申告による還付
  • 新宿闇市と尾津喜之助(前編)
  • 新宿闇市と尾津喜之助(後編)

  • (2002/2/11)
    その後の紀伊国屋文左衛門(前編)

    紀伊国屋文左衛門の蜜柑舟伝説については、相場師列伝で、以前にご紹介しました。

    さて、今回は、その後の紀文について、お話したいと思います。

    彼は、江戸八丁堀に材木問屋を開業して、成り上がっていきます。河村瑞賢のように、江戸の大火事の際、木曽の材木を山ごと買い占めたという話もよく聞きますが、実際のところはよく分かりません。

    彼が登場したのは、五代将軍徳川綱吉の元禄時代。
    江戸時代におけるバブルの全盛の頃です。

    むしろ、側用人柳沢吉保や荻原重秀など幕府の要人と信頼関係を築き、空前の建築ブームに乗れたことが成功の要因でしょう。

    彼が最も成功したのは、上野寛永寺根本中堂の用材調達でした。
    このときの紀文の利益は、50万両といわれています。

    ワイロも使ったでしょうが、きめ細かな見積もりをおこない、低コストの資材調達に成功します。

    一方、紀文は、平成のバブル成金が銀座で遊んだのと同様に、派手な散財でも話題となります。

    吉原を一日中借り切った話は、有名です。
    太夫を側らにはべらせて、太鼓持ちに「紀文のお大尽様」と呼ばれながら、大金を散財します。
    吉原で大晦日に豆の代わりに小判を撒く、紀文の絵が残っているそうです。

    日光東照宮の造営で富を築いた、ライバルの材木商・奈良屋茂左衛門に負けたくないという気持ちもあったのだと思います。 奈良茂は、吉原での派手な遊びで知られていました。

    ◆◆これだけ、贅沢ができるのだということで◆◆
    ◆◆信用をつける宣伝活動のようなものかもしれません◆◆

    ◆◆紀文と奈良茂、彼らを没落させた原因は、吉原での散財ではないと思います◆◆
    ◆◆ やがて、この二人にバブルの崩壊が、襲い掛かることとなります。◆◆

    もどる


    (2002/2/12)
    その後の紀伊国屋文左衛門(後編)

    五代将軍・徳川綱吉は、生類憐れみの令を出したとんでもない将軍というイメージが強いですが、彼の治世は、30年も続いた、元禄繚乱の時代です。

    太平が続き、町人が豊かになり、貨幣経済が発達し、活気に溢れた時代です。
    火事が起きても江戸の街は、直ぐに復興します。幕府による建築も盛んでした。

    まるで、1980年代後半の花見酒に酔いしれた日本経済のようです。

    しかし、最後は、バブルが崩壊して、幕府の財政が破たんします。

    六代将軍・家宣のもとで、1709年、「正徳の治」を行なった儒学者が新井白石です。 彼は、儒学の精神を取り入れた政策を断行します。

    悪法・生類憐れみの令を廃止します。

    儒学では、質素倹約が美徳です。

    白石は、貨幣の質をよくして、デフレ政策を取ります。
    長崎貿易を縮小し、朝鮮通信使を歓待する巨額の費用を節約します。

    経済音痴の儒学者が政治に口出ししたら、
    緊縮財政で経済はメチャクチャになる、と私は確信しています。

    紀伊国屋文左衛門が、どのように没落したか?
    その生涯は脚色され、何が真実かよくわかりません。

    1. 悪貨への投機に失敗した。
    2. 深川木場の材木を火災で失なった。
    3. 賄賂が禁止され、幕府要人とのつながりを失った。
    いろいろな説がありますが、私は緊縮財政と不景気で、土木建築工事が
    行なわれなくなったのが最大の要因だ、と思います。

    江戸の街は活気を失い、木材の価格は、暴落します。
    山や木材を買占め、木材価格の高騰で資産を増加させた紀文は、力の源泉を失います。

    八丁堀の広大な屋敷も、現在の清澄庭園にあった屋敷も借金のかたにとられます。
    晩年、紀文は、深川の八幡宮第一鳥居のそばに住み、貧しい余生を送ったそうです。

    ◆◆彼の死後、紀文の生涯は、人情本や歌舞伎の格好の題材になりました。◆◆
    ◆◆ そして、紀文伝説は、永遠に語り継がれることになるのです。◆◆
    ◆◆ 明日、明後日は、仕事で休みます。◆◆

    もどる


    (2002/2/15)
    脱税がばれた時(前編)

    1987年の伊丹十三監督の映画に「マルサの女」という傑作がありました。
    山崎努が演じるラブホテルの経営者は、脱税常習者です。宮本信子ふんする国税局査察官が、巧妙な脱税手口を暴こうとして、彼と対決します。

    普通の税務署には、強制調査の権限がありません。
    しかし、マルサ(国税局査察部)は、脱税摘発の強い権限を持っています。

    この映画では、ラブホテルの経営者に捨てられた愛人の密告から捜査が始まります。

    長期間にわたる内偵で、宮本は、新しい愛人が捨てたゴミの埋め立て場まで追いかけて、その中から脱税の決定的な証拠を拾います。 これらの証拠が集まると、裁判所の許可がおりて、Xデーが決まります。

    Xデーとは、査察官を総動員して、がさ入れ(強制調査)を行なう日のことです。
    子供がいる家庭では、子供への影響を考えて登校するまで、がさ入れは延期されます。

    令状に基づき自宅、ホテル、特定関係者(愛人のこと)の住居などをいっせいに襲い、玄関のチェーンロックを切り、書類を全てダンボールに詰めて運び出します。 そして、本棚の後ろの隠し金庫を発見して、ワリコーや金塊などの脱税で得た財産を押えます。

    マルサが動くような脱税は、多額の所得の隠蔽や仮装を行った場合なので、重加算税を支払わなくてはなりません。

    重加算税の税率は、本税(本来支払うべきだった税金額)の35%又は40%になります。

    悪質な場合の税金の時効は、7年だそうです。 また、延滞税は年率14.6%です。この他、地方税を支払いますし、マルサによる脱税発覚の場合、隠した所得の全てを払う結果になることも多いようです。

    脱税の罰則は、諸外国に比べて重く、5年以下の懲役又は500万円以下(脱税額が500万を超す場合は、その相当額)の罰金です。そして、両者が併科されることもあります。

    ◆◆さて、株の売却益で、マルサが動くほどの利益を稼ぐ人は、まずいないでしょう。◆◆
    ◆◆ 明日は、株の売却益に関連した、もっと現実的な例をご紹介します。◆◆

    もどる


    (2002/2/16)
    脱税がばれた時(後編)

    現行では、株の売却益に対して、二つの道を選択できます。

    源泉分離を選択して売却代金の1.05%を支払う道と、申告分離を選択して株の売却益26%の税金を支払う道。 高率で儲けた時は前者を、損した時と低率で儲けた時は後者を選ぶのが普通だと思います。

    さて、後者を選び、利益があったのに、税務申告を忘れるとどうなるか?

    税務署が調査し申告漏れを発見して、指摘するとします。
    指摘を受けた者は、修正申告を慌てて提出することになるでしょう。ペナルティーが当然つきます。

    少額の場合でしたら、本税の10%過少申告加算税を余分に支払う必要があります。
    さらに、多額だと無申告加算税として、本税の15%が課税されます。

    さかのぼる年数は、3年又は5年が相場のようです。

    支払いが遅れた期間については、年率14.6%の延滞税がもちろん必要です。売却益を既に使ってしまった場合は、大変ですね。

    以上は、知り合いから聞いた話ですが、間違った点があれば(特に税理士の方)掲示板で教えてください。

    2003年からは、源泉分離課税は廃止され、申告課税(税率は20%に軽減)に一本化されます。 しかし、税務署に常に監視され株購入資金の出所まで追及されかねない申告課税を嫌う投資家は多い、といわれています。

    彼らは、株から撤退するかもしれません。

    また、含み益の多い持株の節税対策として、源泉分離(売却代金の1.05%で済む)を選択した駆け込みがでるかもしれません。

    ◆◆2002年12月の個人の大量処分売りが出るかどうかに◆◆
    ◆◆注目したいと思います。◆◆

    もどる


    (2002/3/10)
    アドバンテストは、仕手株

    半導体の検査装置を製造する会社にアドバンテスト6857という会社があります。

    アドバンテストは、1週間前に今期の業績の下方修正を発表しました。 売上は、950億円、利益は▲230億円です。 発表直後の3月4日、株価は下がると思いきや、反対に880円高となり、10,000円を突破します。出来高は、1,604,100株であまり多くありません。

    そして、3月7日には、出来高1,524,200株で940円高となり、今度は11,000円を突破です。

    先週末のアドバンテストの終値は11600円、時価総額 は1兆1575億円です。
    業界の実情を知っている人にとっては、明らかな割高です。
    半導体が活況(早くて2年後)になれば、売上は倍増しますが、はっきり言えばバブルでしょう。

    空売りの買戻しで株価が上がるというのは、アドバンテストにはあてはまりません。 売り方がこらえきれずに買戻すと、チャンスとばかり新規の空売り投資家がバトンタッチします。

    誰もが高すぎると思うせいか、売り残は、急増する一方です。 先週末の貸し株残は、2,359,300株で、発行済み株数の2.36%にも達しています。

    しかし、この株が直ぐに暴落すると考えるのも危険です。

    この株の大株主は、富士通で20.8%を占めています。もともと浮動株は、少ないと考えられます。

    この株の発行済株式数 は、わずか99,783,385株です。
    日経平均採用銘柄で、1億株未満は珍しいのです。

    日経平均採用銘柄は、225投信と裁定取引で一律に約800万株が買い上げられています。

    日経平均関連の買い上げ比率は、発行済み株数が小さくなるほど大きくなり、
    アドバンテストの場合、買い上げ比率は実に約8%にも相当します。

    この他、TOPIX投信の買い上げ比率が2.5%あります。

    アドバンテストは常に株不足で、僅かの買いで株価が高くなりやすいのです。
    過去50日の出来高の平均は、約96万株です。 冒頭にご紹介したとおり、平均出来高に対して5〜6割増加するだけで、ストップ高となってしまうのです。

    日経平均の除数は、22.037ですから

    11,600÷22.037=526.38円
    526.66÷11886=4.4%

    超ねがさ株のアドバンテストは、日経平均(11,885.79円)の4.4%もの比重を占めるのです。

    僅かのエネルギーで、株価が動き易く、指数に与える影響も絶大!
    日経平均を操作したいものにとって、これほど好都合な銘柄は他にないでしょう。

    ◆◆まさに、ファンダメンタル無視、需給のみで決まる仕手株。◆◆
    ◆◆ 売り方の眠れぬ夜は、まだ続くかもしれません。◆◆

    もどる


    (2002/3/13)
    配当の確定申告による還付

    ご存知のように、株の配当は20%の税金が源泉徴収されています。

    配当は、会社が税金を払った後の利益から株主に対して分配されます。 株主に税金を課すと二重課税になるので、配当は税法上かなり優遇されています。

    この具体的優遇措置が、配当控除で、所得税がその額だけ減額されます。 所得(配当も含む)が1000万以下の人の配当控除は、配当金額の10%です。
    源泉徴収20%と配当控除10%を合計すると30%。

    配当は、税金が30%引かれていると考えればよいでしょう。
    30%も所得税を払う必要のある人は、あまりいません。
    従って、税務署に行って確定申告をすると、大部分の人は、かなりの金額を取り戻すことができます。

    私も、毎年、配当の税金還付を受けています。

    6月や12月、配当が送られて来ます。換金する前に必ずコピーして保存します。
    そして、会社からもらった給与の源泉徴収票とこのコピーを添付資料にして、確定申告書を書くのです。

    所得の低い人なら、20%のすべてが戻ってくることも珍しくありません。預貯金にかかる税金は取り戻せませんから、電力株などの利回り株はこの点でも有利です。

    確定申告の期限は、3月15日までです。まだ、間に合うかもしれません。

    所得(収入ではありませんよ)1000万以上の人は、1000万円を越える部分の配当控除が5%に減らされてしまいます。 高額所得者は税率も高いので、配当は申告しないほうが有利となります。

    1銘柄1回5万円以下(年1回の配当なら10万円以下)の少額配当は、申告しなくてもよいことになっています。

    ◆◆高額所得者は、銘柄の株数を少額配当以下になるように◆◆
    ◆◆分散投資する必要があるかもしれません。◆◆

    (追記3/17)「れろりんが」さんから次のようなご指摘を受けました。

    確定申告の期限は3/15ですが、還付申告は5年間有効です。
    すでに確定申告してしまった人は申告期限から1年以内なら更正の請求で取り戻せます。

    もどる


    (2002/3/23)
    新宿闇市と尾津喜之助
    (前編)

    しかれども朕は、時運の赴く所、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、
    もって万世の為に大平を開かんと欲す・・・

    玉音放送が流れ、日本中が号泣した頃、

    新宿の町は、空襲で見渡す限りの焼野原となり、霊峰富士山が一望できました。
    日本人は、食べ物も、着る物も、家も、民族としての誇りさえも失い、途方に暮れていました。

    終戦から三日目の新聞に、その男は、広告を出します。

    転換工場並びに企業家に急告!
    平和産業の転換は勿論、その出来上がり製品は当方自発の”適正価格”で大量に引き受けに応ず・・

    新宿マーケット 関東尾津組

    当時の物資は、ほとんどが統制品になっており、低価格で配給されていました。
    しかし、政府による配給は滞り、日本人は飢えていたのです。
    統制品を手に入れ、公定価格より高い価格で売る事は、犯罪だったのです。

    その男の名は、尾津喜之助といい、戦前から新宿の露店を支配していた香具師(やし)の大親分です。
    彼は、新宿一帯を不法占拠します。

    1945年8月20日、「光は新宿から」というスローガンとともに、新宿マーケットは、オープンします。
    闇市の始まりです。

    たけのこ生活で、自分の持ち物を売って、生活の糧を得る人。
    兵器の材料から鍋釜をつくり、マーケットに持ち込む工場主。

    農家に買出しに行き、マーケットで販売する担ぎや。
    マーケットで食料を買い、飢えをしのぐ人。

    米軍PXからの横流し品や、日本軍の貯蔵物資を販売する人。
    顧客を求めて街頭に立つ夜の女達。

    尾津に仕切られた新宿マーケットは、あらゆる人間を呑み込み活気づきます。

    警察は、GHGに武装解除され、闇市を取り締まる力はありません。
    日本人香具師による闇市、GHQに開放国民として処遇された韓国系、中国系の闇市。
    力づくの縄張り紛争も多発します。

    東京には、6万人の露店商がいたそうです。

    ◆◆物資が闇市に流れ、配給は、ますます細っていきます。◆◆

    ◆◆ 1947年10月11日、東京地裁の山口良忠判事が餓死します。◆◆
    ◆◆ 闇米の買出しを拒否して、食料統制法を遵守したことが、死を招いたのです。◆

    もどる


    (2002/3/24)
    新宿闇市と尾津喜之助
    (後編)

    闇市の価格は、驚くほど高い。

    米は、公定価格(マルコウ)では、1升50銭に過ぎません。
    新宿の闇市では、闇米がマルコウの55〜80倍(1945年10月)の価格で売られていました。
    担ぎやは、農家まで買出しに行き、30〜40倍の価格で仕入れ、36〜48倍で新宿の卸に売っていました。

    旧円時代、担ぎやの毎月の稼ぎは、1000円に達したそうです。

    一方、月給200〜300円のサラリーマンは、安く闇米を買うためには、会社を休んで農村に買出しに行くしかありません。 親の形見の着物や時計と引き換えに、千葉の農家から闇米を分けてもらうのです。

    闇市の支配者・尾津喜之助は、時の人となります。

    松田組という同業のやくざの例では、露店の入会金20円と三ヶ月分の組合費15円を払い、組の鑑札(営業許可書)をもらいます。 そして、露店は毎日1〜3円のゴミ銭を松田組に支払わなければなりません。

    尾津は、露店に対する徴税も代行するようになります。 都道路占拠税、直接税、間接税を尾津組が代理徴収して、都財政局と税務署に納付したのです。

    ピンはねが行われたのは、間違いないでしょう。 1947年11月22日の朝日新聞によれば、6000万円の金がさまざまな名目で集められ、税金として納められたのは600万円に過ぎないようです。

    GHQは、尾津喜之助を「日本最大の犯罪者」とみなしたようです。
    1946年5月31日、片山内閣が発足して、闇市の取り締まりが本格化します。

    6月22日、尾津は身柄を収容されます。

    1946年8月1日、GHQの指令に基づき、全国いっせいに闇市の取り締まりが実施されます(8・1粛清)。

    多くの闇物資が押収されました。

    同年9月、暴力団の集中的取締りで、35,013人が検挙されました。

    1946年11月20日、GHQは、在日韓国人の取り締まりに関して、日本政府が権限をもつことを明示します。
    1947年2月21日、第二次暴力団取締りで、19,615人が検挙されます。
    6月には、闇市に関係した暴力団の親分が次々と逮捕されます。

    ◆◆日本人は、焼け跡から立ち上がり、◆◆
    ◆◆一心不乱に働き、生産力を次第に回復させます。◆◆

    ◆◆ 日本経済の奇跡の復興とともに、闇市はその存在意義を失い、◆◆
    ◆◆急速に衰退に向かっていったのです。◆

    (参考文献)「東京闇市興亡史」 猪野建治  ふたばらいふ新書

    もどる


    ホームへ