■ミトコンドリアは、かく語りき■

---目次---
  • 人類のルーツは、一人の女性
  • 立ちはだかるネアンデルタール人
  • 1万7000年間の生存競争
  • バイカル湖西岸は、日本人の故郷
  • マンモスは何故絶滅したか?
  • 良い土地に落ちた一粒の種
  • ピカイアと三葉虫(前編)
  • ピカイアと三葉虫(後編)

  • (2002/9/12)
    人類のルーツは、一人の女性

    女系の先祖を辿るとします。母親・・・祖母・・・曾祖母・・・
    すると、60億人の全人類(ホモ・サピエンス)のルーツは、たった一人の女性に収斂します。

    彼女の名は、イヴ

    今から、約15万年前のアフリカの洞窟。

    イヴは、産声をあげます。母にとっては、初めての可愛い娘でした。彼女の誕生日は、不明ですが、判明したら、人類共通の祝日にするべきですね。

    どうして、そんなことが分かるのか?

    ミトコンドリアは、細胞の中にある呼吸に関係した器官で、核とは別に遺伝子をもっています。

    ミトコンドリアのDNAは、母親の物のみを受け継ぎ、父親からは、影響を受けません。しかし、長期間経過すると、DNAは、突然変異で変化します。

    ミトコンドリアのDNAの中で、Dループといわれる約500個の塩基配列は、遺伝には、影響しない無意味な部分です。つまり、突然変異しても、自然淘汰に影響することないでしょう。

    世界中の人間の、この500個の塩基配列を調べます。そして、突然変異が起こる確率を調べて、計算します。 15万年前に、DNAは共通(イヴのもの)だったという結論になるそうです。

    人類は、共通の女性をルーツに持つ、35種類(クラスター)に分類できるそうです。この内の13種類は、アフリカ人のものです。

    世界人口の13%しかいない、アフリカ人が37%もクラスターが存在するのは、人類が長い間、アフリカに留まった証拠です。アフリカは、「人類のふるさと」なのです。

    さて、ここで、もう一人の女性を登場させましょう。

    彼女は、10万年前に生まれました。故郷は、紅海に近い場所、例えばエチオピアあたりでしょう。

    彼女の名前は、ナナ

    彼女は、8クラスターのアフリカ人以外の27クラスターの人類のルーツです。
    イギリス人も、ロシア人の、日本人も、アメリカインデアンも、ポリネシア人もすべて彼女の腹から生まれた一族の子孫なのです。

    ◆◆食糧不足が、彼女の一族をアフリカの地を離れる決心をさせます。◆◆
    ◆◆ まさに約10万年前の出アフリカ紀。◆◆

    ◆◆ シナイ半島を通り、一族が向ったのは、中東でした。◆◆
    ◆◆明日は、休みます◆◆

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    (参考文献)「イヴの七人の娘たち」ブライアン・サイクス著


    (2002/9/14)
    立ちはだかるネアンデルタール人

    ナナの子孫は、10万年前にアフリカから世界に旅立ちます。イスラエルでは、10万年前のホモ・サピエンスの化石が発見されています。

    しかし、ナナの子孫は、なんと約5万年もの長期間、近東に足止めされます。いくら挑戦しても、ヨーロッパや北アジアに進出することは、果たせなかったのです。

    その最大の理由は、ヨーロッパで、繁栄を謳歌していたネアンデルタール人の存在です。身体は、ナナの子孫より頑強で、氷河が覆う北国での生活に適応しています。喧嘩にも、強そう。

    1997年、ネアンデルタール人の骨から、DNAが解析されました。

    ネアンデルタール人と現代人とミトコンドリアDNA(Dループ)の塩基は、26箇所が異なっています。
    突然変異が起こる確率は、約1万年に一回。
    つまり、ネアンデルタール人と現人類は、25万年前に枝分かれした遠い親戚です。

    忘れてならないのは、脳の大きさも1500ccもあり、現代人の1350ccを超えているのです。
    頭も、かなりよかったのでしょう。

    死者を弔った墓場からは、大量の花粉が発見されています。
    大量の花束で、家族が別れを告げたのかもしれません。

    ネアンデルタール人は、現代人より劣った旧人類というより、ララの子孫のゆく手に立ちはだかる、強力なライバルだったのでしょう。

    自然淘汰に数万年もかかった。
    どちらが勝っても不思議ではなかったのです。

    偶然、彼らが新しい武器を発見したら、地球の支配者はネアンデルタール人になったかもしれません。

    ・・・・今から、4万5000年前・・・・

    ギリシャのパルナッソス山の洞窟。
    アスラが産声をあげます。

    気候は今より、ずっと寒冷で、洞窟の近くには大草原が広がっていました。

    ◆◆ネアンデルタール人が支配する領域に初めて進出した一族に、◆◆
    ◆◆待望の娘が生まれたのです。◆◆
    ◆◆ 彼女こそ、現代のヨーロッパ人の約11%を占める人々のゴッド・マザーなのです。◆◆

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    (2002/9/15)
    1万7000年間の生存競争

    成人したアスラは、結婚して多くの娘をつくります。

    洞窟の壁には、色彩のついた土で、野牛、鹿などが、写実的に描かれていました。
    獲物として大型動物が手に入ることを、祈ったのでした。

    見方によっては、彼らが芸術に熱心だった、と言えるかもしれません。

    ユーロッパに進出した彼らは、後にクロマニヨン人と呼ばれます。
    彼らの文明は進化し、強力な武器を携えるようになっていました。

    彼女の夫は、数人の家族と狩に出発します。
    そこで、ばったり、一人のネアンデルタール人と出会います。
    狩猟採集時代、同じ縄張りに、2組の家族が生活するのは、不可能です。

    ネアンデルタール人は頑強な体、クロマニヨン人は華奢な体。
    ネアンデルタール人は、負けるはずがないと見て、石斧を振り上げて、アスラの夫に襲い掛かります。

    アスラの夫も、フリント石器を振り下ろし応戦します。

    勝負は、相撃ち・・・
    両者は、わずかに相手の武器に触れてしまいます。
    この程度なら、お互いかすり傷のはず。ところが・・・・

    ネアンデルタール人の石斧は、アスラの夫に、ほとんど打撃を与えませんでした。
    一方、薄く割ったフリント石は、驚くほど鋭利で、ネアンデルタール人の腕に鮮血が流れます。

    ネアンデルタール人は、やっとの思いで逃げるしかありませんでした。

    こうして、アスラの子孫は、1万7000年をかけて、ネアンデルタール人を西に追い詰めていきます。

    フリント石器を使った狩猟の効率に、ネアンデルタール人は、太刀打ちできません。
    また、両人類の間で混血が進んだ形跡は、まったくありません。

    ・・・・そして、今から約2万8000年前・・・・

    疲れきったネアンデルタール人が暮す、スペイン南部の洞窟。
    狡猾なクロマニヨン人が最後の楽園にまで、侵入してきます。

    もう逃げ場がありません。
    最後のネアンデルタール人は、ここで息を引取ります。

    ◆◆ 20万年以上にわたり繁栄し、一時は全ヨーロッパに生息した、◆◆
    ◆◆旧人類の絶滅でした。◆◆

    ◆◆一方、アスラの子孫は、スカンジナビアやイギリス西部に現在も多く住んでいます。◆◆
    ◆◆特に、チェダー人(イギリスの先住民族)は、有名です◆◆

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    (2002/11/27)
    バイカル湖西岸は、日本人の故郷

    10万年前アフリカを出発したナナの子孫の一部は、東に向います。大型動物は、最も効率のよい狩の獲物でした。

    マンモスを追って、人類はシベリヤに向いました。
    マンモスハンター達の肌は、黒から黄色に変化します。

    顔立ちは、彫が深いのが特徴です。
    彼らは、古モンゴロイドと呼ばれています。

    当時の気候は暖かく、シベリヤは草原地帯でした。

    ・・・約6万年前、ヴュルム氷河期が始まります・・・

    草原は、ツンドラへと変わり、マンモスは姿を消します。
    大型動物の後を追って、古モンゴロイドは南に逃れます。

    当時の日本列島は、大陸と繋がっており、日本海は湖でした。
    彼らは、北から津軽海峡を歩いて渡り、本州に到達します。

    彼らこそ、縄文人やアイヌ人の先祖です。
    混血で誕生した日本人の一方の源流なのです。

    さて、バイカル湖周辺で、逃げ遅れて、寒さに閉じ込められてしまったアジア人が存在しました。厳しい環境下にもかかわらず、彼らは極寒のシベリヤに適応して、奇跡的に生き残ります。

    熱の放出を最小限にするためには、表面積は少ないほど有利です。
    こうして、自然淘汰により、世代を経るにつれて、手足は短くなりました。

    目は一重、鼻は低く、のっぺりとした顔が、凍傷にかからないためには必要でした。
    彼らは、新モンゴロイドと呼ばれています。

    ・・・約1万年前、ヴュルム氷河期が終ります・・・

    日本列島は、大陸と切り離されて、今日の姿となります。暖かい気候に適応したシベリヤの新モンゴロイドも、ついに南下を始めます。

    冬に備えて準備する習性を身に付けた新モンゴロイドは、後に稲作を習得します。

    ◆◆農耕を身に付けたことで、彼らの競争力は、揺るぎないものとなります。◆◆
    ◆◆ 彼らは南を目指します。◆◆

    ◆◆中国東北部、朝鮮半島を経て、船で日本に上陸します。◆◆
    ◆◆ 彼らは、弥生人の先祖。日本人のもう一つの源流です。◆◆

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    (2003/1/5)
    マンモスは何故絶滅したか?

    6500万年前、恐竜は、隕石の落下を契機に絶滅します。
    その後、地球に栄えたのは、哺乳類でした。
    歴史は、繰り返します。

    ・・・1万1000年前の北アメリカ・・・・

    草原を悠然と歩いていたのは、巨大なナマケモノ、長鼻類(ゾウ)のマストドンやマンモス。大空を飛んでいたのは、巨大コンドル。そして肉食獣のサーベルタイガーも巨大でした。

    巨大な生物は、外敵が少なく、自然淘汰を有利に勝ち進みます。

    なかでも、高さ4m以上、長い毛で覆われ、見事にカールした牙を持つマンモスは、無敵の王者でした。

    ある日、マンモスは、数匹の見知らぬ黄色の猿に出会います。

    彼らは、命がけで、氷で陸続きになったシベリヤからアラスカに渡ってきました。
    そして、王者マンモスの前に出現したのです。

    二本足で立ち、手には槍。
    マンモスは、踏み潰そうと突進しますが、槍が放たれ、激痛が走ります。

    堪らず逃げ出したマンモスは、落とし穴に嵌ります。
    穴の底には、槍ぶすま。
    肉は食料に、毛皮は服に、牙は道具に・・・・

    彼らの名は、クロービス人
    それから10000年間・・・彼らは、南北アメリカ大陸を支配しました。
    アメリカ大陸の原住民の共通の先祖です。

    アジア人の親戚筋です。
    彼らは、巨大生物を絶滅させながら南下して、マゼラン海峡まで到達します。
    マンモスを絶滅させたのは、我々人類なのです。

    ・・・・・・・・・

    最近、マンモスを復活させようという計画があるそうです。

    シベリヤで氷で閉じ込められたマンモスから精子を採取。

    アフリカゾウの卵子に人工授精させ・・・雌の50%マンモスをつくります。 50%マンモスの卵子にマンモスの精子を人工授精して・・・75%マンモスを誕生さす。

    ◆◆これを繰り返せば、動物園でマンモス復活の日です。◆◆
    ◆◆ 日本のメガバンクも復活して欲しいですね。◆◆

    (参考文献)「マンモス絶滅の謎」ピーター・D・ウォード著

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    (2003/2/23)
    良い土地に落ちた一粒の種

    ところが、ほかの種は、良い土地に落ち、実を結んで、あるものは百倍、
    あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
    (聖書 マタイによる福音書 から)

    ペルシャ湾にそそぐ二つの大河を上流に遡ると、トルコの標高1000mの高原地帯に到達します。

    ・・・今から約1万年前・・・

    このあたりに野生の麦は、生えていました。
    人類は、他の木の実と同じように、麦を採集して食べていました。

    人類の住居の近くに・・・一粒の麦が、偶然にこぼれ落ちます。
    たった一粒の麦は、翌年たわわに実り、何十倍もの豊かな収穫をもたらします。

    賢い人類は、この体験をヒントに、種蒔く人に進化します。
    農業の発明です。

    麦を育てるには、平野の方が有利です。

    8000年〜9000年前、彼らは、下流地域に移動します。
    彼らの子孫は、シュメール人と呼ばれています。

    二つの川に挟まれた下流地域(三日月地帯)は、洪水により、農業に適した肥沃な土が堆積していました。
    しかし、雨が少ない乾燥地帯。麦を栽培するには、水が不足しています。

    シュメール人は、川から水を麦畑に導き、水不足を解消します。
    シュメール人は、灌漑を発明することで、人類史上初めて、大量の余剰農産物を手に入れます。

    余剰農産物は、交易を通じて、レバノン杉、石材、鉱物などと交換されました。
    レンガで家が建築されます。
    やがて、世界初の都市国家であるウル、ウルク、ニップールが誕生します。

    二つの川の名前は、チグリス、ユーフラテス川。世界で始めて文明を築いた人達は、最古の文字(楔形文字)の発明者でもあります。ウルクは、世界最古の物語「ギルガメッシュ叙事詩」が誕生した街です。

    メソポタミア文明は、四大古代文明の中で、最古のものです。

    ◆◆さて、メソポタミア文明が存在したのは、◆◆
    ◆◆風雲急を告げるイラクの地域です。◆◆
    ◆◆ 世界最古の都市国家遺跡が、他国籍軍の爆撃で破壊されないといいですね。◆◆

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    (2004/12/22)
    ピカイアと三葉虫(前編)

    ・・・今から、約五億数千万年前(古生代カンブリア紀)・・・・

    全ての生物のふるさと・・・海。

    この時期、生物の進化に大異変が起こります。
    多種多様な海洋生物達が爆発的に誕生したのです。

    自然淘汰による競争も過酷になります。

    人間の祖先・・いや哺乳類、恐竜を含む全ての脊椎動物の祖先は、体長4センチの頼りなげな生物でした。 この生物は、ピカイアと呼ばれています。

    ピカイアは、身体の中心に脊索を持ち、筋肉で身体をくねらせながら暗闇の中を泳いでいました。
    いつも、天敵に脅えながら。

    燦燦と輝く太陽の下でも、ピカイアの世界は真っ暗でした。
    我々の偉大な先祖、ピカイアには、目がなかったのです。

    天敵や餌が見えることが、競争を勝ち抜く上で、いかに有利だったか。

    もっとも早く、目を獲得した生物の一つが節足動物の三葉虫です。
    三葉虫の目は複眼で、方解石で出来ていました。

    三葉虫は、海底を這ったり、泳いだりしながら、他の生物を圧倒していきました。 三葉虫は1500属、1万種以上に別れ、3億年もの間、世界中の海に広がりました。

    古生代の地層から、三葉虫の化石は頻繁に発見されます。
    三葉虫の種類で、カンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀などの地層の年代が特定できるそうです。

    ピカイアの子孫は、顎と硬い背骨を持つ魚類となります。目も獲得し、運動能力に優れた生物へ脱皮します。

    ・・・・古生代デボン紀(約4億1000万〜3億6000万年前)・・・・

    魚類は競争に勝ち抜き、三葉虫に替わり海の支配者となります。
    その中のある種類は、川を遡り、淡水に適応します。肺魚、両生類と進化して、ついに水から離れます。 新天地、陸上への進出したのです。

    ・・・古生代ペルム紀(約2億5000万年前)・・・・

    ◆◆三葉虫は突然、絶滅します。1匹も残らずに。◆◆
    ◆◆ 3億年も栄えた生物が、何故、絶滅したのか?◆◆
    ◆◆ この続きは、土曜日に発表します。◆◆

    (参考文献)「ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語」スティーヴン・ジェイ グールド著

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    (2004/12/25)
    ピカイアと三葉虫(後編)

    ・・・今から約2億5000年前・・・

    現在の世界の7大陸は、一つに集まり、超大陸を形成していました。 大陸移動説で名高いヴェーゲナーは、この大陸をパンゲアと呼びました。

    この時期、空前絶後の大絶滅が起こります。 海洋生物の96%が絶滅しました。

    この大事件は、古生代と中生代の分岐点となります。

    引き金になったのは、「小惑星または彗星 の衝突」という説もありますが、詳しいことは不明です。
    はっきりしているのは、乾燥化が起こり、海岸線が急速に海の方向へ後退したことです。

    三葉虫は、視界が鮮明な浅い海に住んでいました。
    しかし、大陸棚は干上がり消滅します。

    3億年も繁栄した種族は、環境の変化や淡水、深海への適応は不充分でした。
    こうして三葉虫は地球から完全に姿を消します。

    現在ではカンブリア時代に共通の祖先を持つカブトガニしか生息していません。

    陸上でも、脊椎動物の70%が絶滅します。
    小型爬虫類の一種(単弓類 )として、陸地で栄えていた人類の祖先も、大打撃をうけます。

    この後、低酸素に適応し、大型に進化した爬虫類が生存競争を勝ち抜きます。
    恐竜は、パンゲアを制圧し、地上の王者となります。

    一方、小型爬虫類は、哺乳類への進化の道を歩むことで危機を脱します。

    ◆◆こうしてネズミぐらい体長の全ての哺乳類の先祖が誕生したのです。◆◆

    ◆◆ 恐竜たちの全盛時代、◆◆
    ◆◆ 我々人類の祖先は、肉食恐竜に怯えながら、◆◆
    ◆◆ 一億年以上も、ひっそりと生き延びていたのです。◆◆

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