■相場師列伝(第6巻)■

---目次---
  • 元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(前編)
  • 元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(中編)
  • 元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(後編)
  • 決戦・東京スタイル株主総会

  • (2002/2/2)
    元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(前編)

    村上世彰(よしあき)さんは、1983年東大法学部を卒業後、通産省に入省したキャリアです。 彼は、通産省を退職後、1999年投資会社エム・エイ・シー(MAC)を設立します。

    さて、昔、生糸の生産で資産を蓄えた昭栄という東証二部上場の会社があります。 生糸の生産は廃業して、電子部品の生産なども、行なっていますが、実態は不動産会社のようです。

    都心のオフィスビルの賃貸、生糸工場の跡地を利用したショッピングセンターのスーパーへの賃貸、マンションの分譲などが本業です。株価は、700〜800円の安値に放置され、含み資産が有効に生かされていない会社といっていいでしょう。

    2000年1月、村上氏は、この会社に狙いをつけて、日本初の敵対的なTOBを仕掛けます。
    1月21日の昭栄の株価は、880円。この価格を13%上回る1,000円で、
    発行済みの1,400万株を対象に買い付けると発表したのです。

    MACの資金は、海外の投資銀行のHSBCの仲介で、年金資金やヘッジファンドの出資を受けているとのことです。国内はオリックスなどの事業法人や金融機関が融資しているようです。

    MACと経営側が株式の過半数を目指して、株集め競争するのではないだろうか? 週明けの24日、25日の昭栄株はストップ高で、取引は出来ませんでした。

    26日、TOBの価格を上回る1,280円で6,900株が比例配分されます。

    翌27日の寄り付きは、ストップ高の1,480円でしたが、これが天井でした。
    ここで買った人は、高値づかみで後悔します。

    さて、筆頭株主のキャノンや富士銀行を中心とした芙蓉グループは、TOBに応じない方針を固めます。
    60%の大株主が、応じなければ勝負になりません。

    昭栄の経営側も、取締役会でTOBの反対を決議し、赤字部門の電子部品部門からの撤退等の経営改善を急ぐことを表明します。

    1000円という価格も安すぎたと思います。
    2月15日、TOBの期限が終了します。最終的な応募は、わずか6.52%の912,862株でした。

    村上氏は、昭栄の経営権の獲得には失敗します。株価も次第に1,000円に近づき、買い付け期間終了後の2月16日には、950円に値下がりします。

    ◆◆しかし、村上世彰氏は有名人となり、TOBによって企業を買収する時代が◆◆
    ◆◆そこまで来ていることを、多くの経営者に実感させたのではないのでしょうか。◆◆

    ◆◆ 経営資源を有効活用せず、株価を安値に放置する経営者は、◆◆
    ◆◆TOBに怯えなければならないのです。◆◆

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    (2002/2/3)
    元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(中編)

    村上世彰は、東急ホテルチェーンの500万株超(発行済株式の約5%弱)を購入します。 2000年12月27日、東急電鉄は、村上氏の合意のもと、東急ホテルチェーンの完全子会社化を実施します。交換比率は、東急電鉄1:東急ホテルチェーン0.32でした。

    その後、東急電鉄は、都市再生銘柄として大きく値上がりしたため、MACは売却により利益を得たはずです。

    村上氏は、次ぎ次ぎと株を買い占めて、話題を提供します。

    さて、会社四季報2002年第1集から村上世彰氏のファンドが保有する会社のリストをあげると、次のとおりになります。 (東洋経済2002/1/12より)

                    
    銘柄コード株主順位株主比率
    日本電設工業1950 7 2.8%
    九電工1959 5 2.3%
    日比谷総合設備 1982  1 6.5%
    クレイフィッシュ 4747  4 3.3%
    サイバーエイジェント 4751 4 8.7%
    アライドマテリアル5728 2 10.0%
    横河ブリッジ5911 6 3.5%
    極東開発工業 7226 6 2.6%
    アールビバン 7523  6 2.4%
    ジャック・ホールディング 7602 3 9.9%
    長瀬産業8012 10 2.2%
    東京スタイル8112 2 5.9%
    シナネン 8132  2 9.6%
    昭文社 9475  4 4.2%
    角川書店 9477 5 4.2%
    ケーユー9856 9 3.7%

    これらの銘柄には、明らかな共通点があります。
    MACのホームページも参考にして、以下にまとめてみたいと思います。

    株価純資産倍率(PBR)が1倍を大きく下回っている点です。簡単にいうと、純資産が株式時価総額を超えている銘柄です。 なかにはキャッシュや有価証券などの資産が豊富で、手元流動性だけで、株式時価総額を超える企業もあります。

    公募で資金を集めながら、ほとんど使わず、株価が暴落しても平気でいるIPO企業、歴史が長く内部留保は厚いが現状では投資先がない企業などは、格好の標的でしょう。

    村上世彰氏の主張は明解です。

    企業はコア事業への集中を図るべきです。

    そして、適切な投資対象がない場合には、余ったキャッシュは自社株買いを積極的に進めたり、
    配当することで、株主へ利益を還元すべきだというのです。

    また、経営陣と株主の利害の同一化を図るため、ストックオプションの導入も要求しています。

    ◆◆TOBによるM&Aも手段として、使われるでしょう。◆◆
    ◆◆ 株主の当然の権利を前面に押し出した、アメリカ的な合理主義の考え方です。◆◆
    ◆◆ 彼のファンドは成長して、当分の間、兜町を賑わす気がします。◆◆

    ◆◆ 明日は、完結編。風雲急を告げる東京スタイルについての話です。◆◆

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    (2002/2/4)
    元通産官僚・村上世彰は、株主の味方(後編)

    東京スタイルは、売上(連結)625億円のアパレルメーカーです。現金や有価証券の保有高だけで、1280億円にも達しており、今日の時価総額1330億円(1298円×102,507千株)にほぼ匹敵します。

    余裕資金の運用は失敗することもあり、マイカル向け資産担保債権40億円が貸倒引当金として計上されました。

    同社は、500億円を投じて、ファッションビルを購入する計画を持っています。

    村上世彰氏が率いるMACは、東京スタイルの株式を買い増しして、2002年1月15日の時点で9.3%を取得し、筆頭株主におどりでます。この内7.7%は、外国人投資家の出資分です。

    MACは、1月31日に東京スタイルに対して、次の内容の株主提案権行使請求書を提出しました。

    ファッションビルへの500億円の不動産投資を中止すること
    現金や有価証券を原資として、自社株買いを行なうこと

    さて、2月1日この情報が市場に伝わります。自社株買いが実現すれば、株価上昇は必至です。
    同社の株価は179円高の1319円、出来高は2,543,000株の大商いでした。

    この影響は他にも波及して、村上ファンドの関連株は、この日全面高でした。

    会社側は、「MACの意見に対するコメントはできない」とマスコミに回答しているようです。 高野社長は、マスコミの取材に応じていないようですが、どうも、対決姿勢が鮮明になってきているようです。

    同社の決算は2月で、株主総会は5月に開催されます。
    どちらの主張が通るか?

    ◆◆両者の間で、一般株主の委任状の争奪戦が、始まるかもしれません。◆◆

    ◆◆ 昭栄のバックには、芙蓉グループがありましたが、◆◆
    ◆◆東京スタイルには、同社を強く支える企業グループがあるわけでもなく、◆◆
    ◆◆先行きは予断を許しません。◆◆

    (参考文献)2002年1月26日 「週刊ダイヤモンド」

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    (2002/5/24)
    決戦・東京スタイル株主総会

    さて、5月23日、午前10時、東京スタイルの株主総会が始まります。

    M&Aコンサルタントを率いる村上世彰は、11.9%の東京スタイル株を保有して、同社の筆頭株主です。彼は、次の提案を行なっていました。

    株価1100円の東京スタイルが、500円の配当を実施すること。
    500億円(発行済み株数の33%)の自社株買いをすること。

    29%の外国人株主が村上側につくと予想されていました。投信が棄権にまわり、個人株主(8%)を味方につければ勝算充分との読みでした。壮絶な委任状争奪戦が繰りひろげられます。

    これを迎え撃つ高野義雄社長の会社側は、譲歩戦略で大株主の信任を得ようとします。
    すなわち、長年続けた12.5円の配当を増配して、20円とします。そして、123億円(10%)の自社株買いを提案し歩み寄ります。

    会社側は、UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の支持を取り付けます。 伊勢丹などの取引先なども会社側です。持ち合い株の多数派工作が事前に進んでいました。

    7時間が経過した午後4時。投票が行なわれます。

    会社側提案の20円配当
    賛成48,081票
    反対37,456票

    会社側提案の10%の自社株買い
    賛成45,522票
    反対40,015票

    いずれも可決。村上氏の500円配当、33%の自社株買い提案は、大差で否決。
    「異議なーし」最前列に陣取った東京スタイルの社員株主から、歓声があがります。

    村上側の完膚なきまでの敗北でした。

    最大の敗因は、村上氏に好意的だった外国人投資家の保有株5%が、委任状を出さなかったことです。 棄権にまわるとみられた投資信託も会社側につきます。個人株主まで、会社側支持が多かったようです。

    あれは、三ヶ月前(2月25日)の配当落ちの日・・・

    東京スタイルの終値は、前日と比べて212円も権利落ちしました。 500円配当の40%。そのくらいの確率で、市場は村上さんを信じていたのです。

    もし、村上氏が勝利したら、一株当たり500円も会社から旧株主に流失するわけです。
    会社側勝利なら、株価は上がるはず・・・

    ところが、今日の東京スタイルの株価は、1100円で変わらず。

    そうです。市場は、最初から村上氏は敗れると決めていたのです。
    勝負にそろそろ勝たないと、誰も彼のことを信じなくなりますね。

    ◆◆村上氏は、株を投売りするか?◆◆
    ◆◆ それとも株を買い集めて、捲土重来か?◆◆

    ◆◆ 会社側提案の10%自社株買いは本当に実施されるのか?◆◆
    ◆◆ まだまだ、興味は尽きません。◆◆

    (参考文献)
    日経新聞(5月24日朝刊)
    朝日新聞(5月24日朝刊)

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