■世界名作全集■
スペードの女王(前編) |
プーシキンの名作スペードの女王は、賭け事を題材にしており、私にとって忘れられない短編です。
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ゲルマンは、爪に火をともす生活を送りながら、若いのに大金を溜め込んでいました。
職場で、仲間達はファラオンに熱中していました。
ファラオンというのは、19世紀に流行したトランプゲームです。 ゲルマンは、ファラオンを観ているだけで、賭けに参加はしません。
彼は、丁半博打は、嫌いでした。
ある日、ゲルマンは、87才の伯爵夫人が、ファラオンの必勝法を体得しているとの噂を聞きます。
「なんとしても、その必勝法を知りたいものだ」とゲルマンは思います。
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伯爵夫人は着替えようとして寝室に入ると、見知らぬ男が立っています。
その男は、「ファラオンの必勝法」を聞き出そうと女中の手引きで侵入したゲルマンでした。
「お願いです。ファラオン必勝法を私に教えてください。私は、道楽者ではありませんし、金のありがたさを知っています。 稼いだ金は、決して無駄に使いません」
老婆は、震え上がるばかりで、声がだせません。
「この糞ババァめ!それなら、いやでも吐かしてやる!」
とゲルマンは、懐から拳銃を取り出し老婆を狙います。
蒼ざめた老婆は、後ろに反って、倒れます。
恐怖のあまり、心臓が停止してしまったのです。
ゲルマンは、ことの成行きを悔やみます。
「拳銃には弾を込めていないのに」
・・・それから三日後・・・
伯爵夫人の告別式を密かに訪れ、霊を慰めようとします。宗教心もないくせに、彼は、そうすることで祟りを防ごうとしたのです。
ゲルマンが最後の別れを死体に告げようとすると・・・
伯爵夫人は嘲るように片目をまたたいたような、気がしたのです。
まわりの人は、何もなかったように振舞っています。
疲れているので、錯覚に違いない。
彼は、深酒をして眠りにつきます。
その日の深夜・午前2時45分
ゲルマンが自宅でふと目を覚ますと、枕元に誰かの気配がします。
◆◆彼が見たのは死装束の老婆・・・この世をさ迷う伯爵夫人の幽霊でした。◆◆
◆◆この続きは、明日発表します◆◆
スペードの女王(中編) |
「おまえにファラオンの三枚のカードを教えよう」
と伯爵夫人の霊は、ゲルマンに語りかけます。
「3・・・7・・・1・・・とこの順番で、賭けなさい。
一晩に一枚だけ、三日間の勝負です。
この勝負が済んだら、おまえは死ぬまで、カードを手にしてはいけません。
私を殺したことは、お前が、かわいそうな女中と結婚すれば許しましょう。」
伯爵夫人の霊は、消えます。
ゲルマンは、幻の数字を書き留めます。
「やっと手に入れた幸運を信じて、舞台を選び、最大限生かさないと。」
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上流階級の集うぺテルブルグの賭博場では、ファラオンが行われていました。
ここで親役は、モスクワで最も有名なファラオンの名人・チェカリンスキー。
ゲルマンは、みすぼらしい身なりで登場し、王者チェカリンスキーに勝負を挑みます。
「掛け金は、いくらにしますか?」
「47,000」
ゲルマンは、手形を取り出して選んだカードの上におきます。
それは、長い間、生活を切り詰めて貯めた全財産でした。
通常の掛け金の最高額の約20倍です。
観客は、息をのんで大勝負を見守ります。
ゲルマンの心臓の鼓動が高まります。
チェカリンスキーがカードを2枚配ります。
右に「9」、左に「3」。
右の数字と一致した場合は親の勝、左と一致すれば子供の勝です。
ゲルマンの札がひっくり返されます。
「もちろん3で、ゲルマンの勝ち!」
チェカリンスキーから手形を受け取るとゲルマンは、帰宅します。
◆◆ゲルマンの見る世界は虹色に輝き、◆◆
◆◆身体は幸福で満ち溢れていました。◆◆
◆◆
興奮を抑え、明晩の勝負のために早く寝ないといけません。◆◆
スペードの女王(後編) |
・・・・二日目・・・・
ゲルマンは、チェカリンスキーの賭博場を訪れます。
膨れ上がったゲルマンの全財産が「7」の札に賭けられます。
右に「ジャック」、左に「7」。
ゲルマンの連夜の大勝利です。
チェカリンスキーの表情が、苦痛で歪みます。
ゲルマンは、明日も来ることを告げて去っていきます。
満天の星を仰ぎながら、彼は呟きます。
「明日勝ったら、一生カードには手を触れない。 大金持ちになって、美女が擦り寄ってきても、俺は伯爵夫人の女中と結婚し、必ず幸せにする。 約束は、守らないといけない。」
・・・三日目・・・・
ゲルマンが、賭博場に入ると話し声はやみ、人の輪が彼を取り囲みます。
席は、直ぐに譲られ、最後の対決が始まります。
ゲルマンは、注意深く「1」に全財産を賭けます。 その表情は、自信で満ち溢れていました。
チェカリンスキーのカードを配る手は、震えていました。
偶然が続き過ぎます。この強敵は、伝説の秘法を知っているかもしれないのです。
右に「女王」、左に「1」
「やった」と叫んで、ゲルマンは自分の札をひっくり返します。選んだ「1」が出るはず。
ところが・・・
そのカードは「1」ではなく、いつの間にか「スペードの女王」にすりかわっていました。
ゲルマンは、全財産を失い、チェカリンスキーは王者の貫禄を取り戻します。
「そんな馬鹿な」とカードを見つめると・・
「スペードの女王」は、嘲るように片目をまたたきます。
伯爵夫人と生き写し・・・
「あいつだ!」とゲルマンは絶叫します。
◆◆その後、ゲルマンは、精神を病んでいきます。◆◆
◆◆
何を尋ねても返事をせずに、◆◆
◆◆「3・・7・・1」「3・・7・・女王」と呟くだけでした。◆◆
(参考文献)「スペードの女王・ベールキン物語」プーシキン著
(注)原作をベースにかなり、脚色しています。
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